「暴走癖のある男」(突然ティッシュ箱、番外なれそめ?編)






いつのまにか・・・追いかけてた。


好きになってた。


朝のHRよりも早く。他のやつらより早く、逢いたくて。


それだけのために、朝起きるのも早くした。


あいつの気持ちにも、気がついた。


(あんな奴のどこがいいんだよっ・・・。)


よく知りもしない相手が憎くてしょうがなくて。


だけど俺は・・・声をかけることさえできなかった。


俺たちの前じゃ見せたこともないような顔して、笑って。


あの男ばっかり見上げて。


イライラして・・・おかしくなりそうだった。





そんな時に、偶然見つけたんだ。


放課後の静かな教室で眠るあいつを・・・。











眼鏡を外して机に突っ伏して眠る姿に隼人の胸は激しく音を立てた。


苦しいくらいの鼓動に身体が熱くなって、微かに震える指で、そっと髪に触れた。


「・・・・・・・・・・・・・・」


艶やかな黒髪を撫でても、目を覚まさない。


柔らかな頬に触れても、目を覚まさない。


穏やかな寝顔に・・・どんどん距離は縮まって。


微かな寝息は、さらに心を熱くして・・・。


優しい綺麗なその全てに。


どうしようもなく・・・・・・・胸が痛かった。





「起きろよっ・・・・・・」


なんで・・・わからない?


どうして・・・気付かない?


どうして・・・・・・お前は俺を見ないんだよ・・・。


今は二人きりなんだ。


あの男だって・・・他の誰だっていない。


だから・・・。


「起きて・・・俺を見ろよ・・・」


言えば・・・。


好きだっていえば・・・俺を見てくれるか?


俺のことだけ、見上げてくれるか?


俺のことだけ考えてくれるか・・・?


「・・・なあ・・・・・・」


限界だった。


二人を見るのも。あんな笑顔を見るのも。


踏み出せない自分にも・・・。


どうしたらいいかなんて、わかない。


どうやって伝えればいいかなんて、わからない。


苦しすぎて、辛すぎて・・・。


肝心な言葉が出てこない。


だけどもうどうしようもなく、限界で・・・。


触れることしか・・・できないと思った。





だから、腕の中に埋める顔を無理やり引き寄せて、その唇にキスすることにした。








「・・・・・・・・ん・・・・・?」


無理やり塞がれた唇に、久美子が気がついた。


変なふうに持ち上げられた顔と息苦しさに、ぼんやりとする頭でうっすらと目を覚ませば。


「・・・・・んっ?!」


(な、なにっ・・・?!)


すぐ傍っていうか、もう信じられないくらいに隼人の顔があって、キスされてると思ったら
久美子の顔はかあぁ〜っと音を立てるように真っ赤に染まった。


「んっ・・・んん〜〜〜っ!?」


座ったままの体勢で、のしかかってくるようにキスをする隼人の身体を押し返すと僅かに身体が離れる。


「な、ななな・・・な、なにやってんだっお前はっ・・・・・・・って・・・ちょっ・・・っ?!」


離れた隼人を久美子は真っ赤な顔で見上げた。


混乱していて、視線が合っているのかもわからない。


けれどまたその顔が近づいてくるのはわかって、久美子は咄嗟に目を瞑りながら慌てて叫んだ。


「ちょっ・・・ちょっとまてーーーっ!?」








「・・・・・・・・・・・・・・・・・」


なんとか隙をみつけて椅子から立ち上がった久美子だったけれど、逃げたところがまずかった。


(壁に逃げてどうするよっ・・・私っ!?)


壁と隼人の板ばさみ状態。


「あ、あのっ・・・矢吹・・・と、とりあえず・・・お、落ち着こうっ!なっ!?」


「俺は結構落ち着いてんだけど?ちょっと理性限界っぽいけど」


真っ赤な顔して泣きそうな顔して。


抵抗しようと伸ばされた手は、制服を掴んだまま小さく震えて・・・。


胸の痛みなんか吹っ飛んで。


可愛すぎて、耐えられない。


もっと触れたくて。抱きしめたくて・・・キスしたくて。


「・・・っ・・・や、やぶきっ・・・やめ・・・んっんんっ・・・」


赤く染まった頬を撫でて、もう何度目かのキスをする。


なのにいつまでたっても久美子は抵抗の声ばかりで・・・。


「お前っいいかげんにしろよっ!」


隼人はちょっとキレ気味だった。


と、いっても抵抗されて当然だと思うのだが・・・。


キレ気味の隼人には、抱きしめてキスする以外のことは頭にないらしい。


「なにいってんだっお前はっ!?そっちこそいいかげんにしやがれっ!!」


なんで私がキレられなきゃなんねーんだっ!


怒りたいのはこっちだっ!!


半泣きになりながらも、久美子は負けじと叫んだ。


「人に勝手にキスしやがってっ!だいたいなんでこんなことされてんだっ私はっ!?」


「それはっ・・・・・・」


咄嗟に言いかけて、隼人はうっと声を詰まられた。


途端にダラダラと冷や汗が流れ始める。


好きという言葉が出てこない。てか、言えない・・・。


言ってしまえばいいのに。


「・・・・・・・・?」


急に黙りこんだ隼人に久美子は怒りを抑え、訝しげに首を傾げた。


「な、なんだ・・・?どうした?」


赤くなったり青くなったり混乱しているらしい様子に、なんかちょっと心配になってくる。


「・・・・・・・矢吹?」


数十秒の沈黙の後。隼人は、疲れきったような深い溜息をついて、言った。


「・・・・・・・・・・・・・・・俺・・・・・・・帰るわ・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・は?」


ボソッと言い残し、なぜか沈んだ様子で教室を出て行く背中を久美子はぽかーんと見送った。


「・・・・・・な、なんだったんだ・・・?」


と、首を傾げたのだが。


その次の日から、隼人のわけのわからない行動は続くことになった。








少しでも二人っきりになれば腕を伸ばしてくるは、のしかかってくるわ、キスしてくるわ・・・。


パニックと恥ずかしさに抵抗らしい抵抗もできずに、なかば諦めの気持ちで隼人の腕の中に納まった
久美子は、矢吹隼人の性格の中に、溜息と共に勝手に付け加えることにした。



「暴走癖あり。」と。








不器用すぎる男と、鈍感すぎる女。


二人の恋は・・・こうして動き出したのだった。








あとがき


なんか隼人好きな方には、本当にごめんなさいって感じです・・・。

てか駄文過ぎる・・・。

私の全部の小説の隼クミがこんな感じじゃないと思いますが、

「突然ティッシュ箱」の二人はまあこんな感じだろうかと・・・。


押され流されて、始まる恋もありかな〜・・・と、思ったので。

てか、そういう話がたまらなく好きだったりするんですよね!