修学旅行から数日後。 気になって、ただ・・・あの時の篠村の姿がちらついて、離れんかった。 膝を抱えて、小さく震えて、泣いて。 ぎゅうっと胸が痛む。 あいつのこと思うて、泣いとんのか? ずっと一緒におったのに。家も近所で、クラスも一緒で、部活も同じ。 それなのに、あんな姿見たこともなかった。 やっぱ好きなんか?あいつのこと・・・。 なんや、胸がごちゃごちゃで。むしゃくしゃして、自分でもようわからん。 でも・・・そんな悲しそうな顔すんなや。 なにもできん俺が、ムカツクから。 ・・・なあ・・・泣くなや・・・。 気になって・・・。また、あんな風になるんやないかって、なんか気になって、目が離せん。 それなのに、なんや。あのボケ。 「−−−ほんまぁ〜」 相変わらずニコニコ笑って、話しよって。 気にしてる俺がアホみたいやないか。 もう知らん。べつに関係あらへん。あんなボケ。 でも・・・なんか、目が離せん。 ごちゃごちゃして。むしゃくしゃして。またわけわからん。 胸が痛くて、ズキズキ痛くて。 離れろ。見んな。笑うなや・・・。 なんで・・・こんなこと思わなきゃならん。 関係ない。 全然関係あらへん。 まったくもって関係ない。 知らん。知らん。 知らん・・・。 篠村なんて・・・ヤバ姉ぇなんて・・・ 「−−−えっ?ぶ、ブーっ?」 関係ないはずなのに。もう、知らんのに。 気がついたら・・・篠村の腕、掴んで、引っ張ってた。 「おーい、なんや、せっきー」 笑ってる中田三郎の声なんか無視して。 「ど、どうしたん?」 困ってる篠村の手、引っ張って、ズンズン歩いた。 気になってた。目が離せんかった。 あいつのこと思うて泣くとこなんて、もう、見たくなかった。 後ろの方で先生が怒鳴っとるのも無視して。 邪魔されんように。ズンズン歩いた。 いつのまにか校庭まできとって、篠村がなんや呟いたのが聞こえた。 「・・・気に・・・してくれとるん?」 伺うような声にギクリときて、思わず立ち止まった。 胸がざわついて。なんやそわそわして。 なにも言えん。 「・・・あの時、泣いてしもうてたから・・・心配してくれたん?」 「・・・べつに・・・心配なんて・・・しとらん・・・」 途切れ途切れに、やっと言えて。 ちらっと少し後ろを歩く篠村を見やったら。 笑ってた。 「大丈夫よ、ぶー。−−−ありがとぉ」 柔らかく、笑っとった。 嬉しそうに見えたんは・・・きっと、気のせい。 胸がぎゅうっとなる。ズキズキ、ドキドキ、鳴りおって。 わけ、わからん。 途端になんか無性に気恥ずかしくなって、前向いて歩き出したら、篠村がまた笑ったような気がした。 「・・・なんや・・・」 なんか、むかついて。それでも振り向けなくて。 ボソッと言ったら、気のせいなんて思えないくらい嬉しそうな声がした。 「凄い久しぶりやな〜思うて。」 「・・・はあ?」 意味わからなくて、思わず振り向いてしまった。 振り向いた先で。なにがそんなに嬉しいのか、ニコニコして。 「こうして、ぶーと手ぇ繋ぐの。すごい久しぶりやね」 きゅっとなる感覚に。 「−−−っ!?」 その時はじめて、いつのまにか手を握っていたのに気がついた。 ボッと顔が熱くなる気がして。身体中がビリビリきて。胸がドキドキして。 「・・・っ・・・」 咄嗟に口開いても、声が喉に突っかかったみたいにでてこなくて。 それでも・・・離せんかった。 ぎゅっと力込めたら、ぎゅっと握り返して。 慌ててそっぽ向いて、また、ズンズンと歩き出す。 なんやねんっ。なんやっ・・・。 わけわからん。 なにが嬉しいんじゃ、ボケっ。 俺はべつに。べつに・・・。 けど・・・。 確かに久しぶりの感覚だった。 ずっと昔に、よく感じていたぬくもりと同じ。 あの頃は・・・俺が手を引かれてた・・・。 懐かしい思いにチラリと後を窺えば、相変わらず、嬉しそうにニコニコ笑って。 なんや・・・少しだけ、可愛いなんて・・・思うてしもうたかもしれん。 ヤバ姉ぇ相手に、なに考えとんじゃ。自分のアホって、思うけど・・・だけど、 誤魔化せそうになかった。 「−−−ぶーぅー」 むかつくあだ名を呼ぶ声も、どっか可愛くて。 「・・・なんや、ボケ」 「呼んでみただけぇ」 嬉しそうに笑う声も、笑顔も。 握り締めた手の感触も、ぬくもりさえも、なんか可愛くて。 あ゛〜もう、どないすんじゃっ。 気になってたあの時の姿でさえ・・・どっか可愛く思うてしもうて。 そういえば昔から可愛いかったような気さえして。 俺ってホンマ、アホ。 俺の知らないお前なんか、見たくなかった。 変ってしまうお前なんか、知りたくもなかった。 でも、変わってく。 こいつも、俺も。きっともっと・・・変わってく。 それを認めんのが嫌だったのかもしれん。 離れてしまうのが、嫌だったのかもしれん。 たぶん一緒にいたかったんは・・・俺の方や。 そう思うたら、どこか胸のもやもやが晴れた気がした。 まだ、ようわからん何かが咽に胸にひっかかっとるけど。 いつか、わかる気がする。 「海行くか?」 「ええねぇ〜」 嬉しそうに笑うこいつがおれば、きっと・・・。 あとがき なんでしょうね。なんか、ボケ、ボケ、言わしたかったって感じでしょうか。 ドラマ見た後、ふわっと思いついたものを書いただけなので、なんか中途半端ですね・・・(汗) 浩之の「〜じゃ、ボケ」は、照れ隠しのような気がするのは 私の勝手な思い込みかもしれませんが、そんなイメージで読んでくれていたら嬉しいです。 ていうか、方言+一人称はかなりむずい・・・。 変な方言とか、ちがうんじゃない?ってところは、ご指摘下さったらと思います。 |