休日の朝。朝食を済ませて、縁側で一人ぼんやりと座ってみる。


朝から縁側を陣取る干物女の姿はない。

昨日遅くまで頑張っていた仕事の疲れが出たのか、まだ起きてきていないのだ。

奥のドアを一瞥して、見慣れた庭を眺めた。


静かな日。


静かで、穏やかな日は嫌いじゃないはずだったのに。小さく溜息が出る。


洗濯も済ませたし、午後には買い物と掃除でもしようか。

そんな大して意味のないことを考えていると、いつもの白猫がゆったりと足元に近寄ってきた。


別に、寂しくなどないけれど。


手でそっと触れてみれば、警戒することもなく擦り寄ってくる。

その仕草が思った以上に微笑ましくて、小さく笑った。






□□□






「んーー・・・」


大きく伸びをしながら部屋から出てきた蛍は、目の前の光景にパチリと目を瞬かせた。


縁側に座ってる高野の腕の中で、猫が丸くなってる。


俯き加減で最初はわからなかったけれど、近づいてみると一人と一匹は眠っているようだった。

両腕に大事に抱えられるようにして膝にいる猫は、気持ちよさそうに大きな瞳を閉じてちょこんとしている。


蛍は縁側に膝をついて、そうっと高野を覗いてみた。


(部長がお昼寝なんて、珍しい・・・)


こくりと落ちた横顔は、穏やかで無防備だ。


自分よりずっと年上で、会社の上司だけど。

こういうのを眺めてみると、なんだか可愛いかもと思う。

そうっと猫の頭を指先でちょこっと撫でながら、微笑ましい一人と一匹に蛍は柔らかく微笑む。


と、数秒もしない内にお腹が鳴った。


(う〜・・・パンあったよね・・・)


お腹をさすりながら立ち上がると、昨日帰りに買ってきてそのまま居間に置いておいた
コンビニの袋をあさってみる。

瞬間、ガサガザと音が響いて慌てた。


「・・・・・・」


思わずハッとして縁側を見る。

変わりないことにホッと胸を撫で下ろして、今度はゆっくりと袋に手を伸ばした。



慎重に。慎重に。


取り出すときも、ビニールを破く時も。とにかく極力、音を立てないようにしながら。

もぐもぐ口を動かしてチラチラと縁側を気にしながら、

そうしてパンを食べ終えると今度はお菓子に手を伸ばした。


新発売のチョコレート。

箱を開けて子袋から出して、パクリと一つ。


「んっ!うまっ!ぶちょおーっこれ美味しいですよっ・・・っ!!?」


ぱあっと笑顔を浮かべて歓声をあげた後で、ハッとする。


縁側を見つめて。

でも、今度はホッとなんてしなかった。


チョコレートを口に含んだまま、じとーっと見つめてテーブルに突っ伏す。


(・・・部長、起きないかなぁ・・・)


静かにしてるのが嫌なんじゃない。

なんの話も出来なくて、何も答えてくれないから、つまらないのだ。


一人と一匹だけで気持ちよさそうに寝ちゃって。


ズリズリと膝をついて移動しながらずいっと寝顔を覗いてみても、やっぱりまだ寝てる。



隣にちょこんと座っても、なんだか気持ちは晴れなくて。


蛍は、高野の腕にそうっと寄りかかってみた。


柔らかな甚平の生地に少しだけドキドキして。


でも、触れ合うぬくもりが何だかとても嬉しくて、ホッとした。


(部長が起きたら、一緒に食べよう)


口の中にまだほんのり残ってるチョコレートの甘さと、優しいぬくもり、静かな縁側。


蛍は嬉しそうに微笑んだ。






□□□






−−−ガタッと音が響いて、目が覚めた。



左側の頭と肩が窓にぶつかっている。


(いつの間に寝てたんだ・・・?)


微かな痛みに眉を寄せながら上体を戻そうとして、高野は反対側からの重みに気がついた。


膝の上には大人しい猫と、右腕に寄りかかって寝ている蛍。




高野は一人パチリと目を瞬かせた。






***************



え、えっと・・・何が描きたかったかというと、ですね。

えっと、な、なんだろう・・・?

もっと雰囲気とかにゃんことか、活用できるものは沢山あったはずなのにな。

消化不良な出来に・・・。