「部長なんて、大っ嫌いです!!!」


開口一番そう言われ。

いつもなら多少機嫌が悪くても、「おかえりなさい」と言ってくれる彼女からの一言に高野は呆然とした。


ああそう。嫌いで結構。大嫌いで大いに結構。

大嫌いなら荷物まとめてとっとと出て行ったらどうだ私は全然構わないぞ。と、皮肉通り越して冷たい言葉も出ないほどだ。


いったい、私が何をした?


今日一日の出来事を思い返してみても、思い当たるふしはなく。

怪訝に首を傾げると、地団駄を踏んでいた彼女が何やら紙切れをズイッと目の前に突きつけてきた。


「これですっ!このポイントシール!!なんで優香さんにあげちゃうんですかっ!?」


「ぽ、イントシール?」


「そうです!優香さんが嬉しそうにこの台紙に貼ってるの、私見たんですから!!」


一瞬迫力に圧されて仰け反りつつも、紙切れをまじまじと見つめてみる。


確かにそこには見覚えのあるシールが。

記憶を辿ってみれば、今日の昼に食べたコンビニのサンドイッチに付いていたものだ。

そしてそれを見た要が

「このアロマキャンドルセットが欲しくて、彼女集めてるんですよ。なんか可愛いっすよね」

とだらしなく緩んだ顔で言ったと思えば、

「もうっ要さん!なにいってるんですか?!」

と彼女が恥ずかしそうに要の袖を引っ張って・・・と、

目の前で繰り広げられている光景に半分呆れ、半分微笑ましくて、シールを彼女にあげたのだが、


「なんだ、君もそのシールを集めていたのか」


今知った、というニュアンスに蛍の身体がわなわなと震えた。


「ひっ、ヒドイ!あんまりです!」


「なんだよ・・・?」


「この前話したじゃないですか!!ちゃんと聞いててくれなかったんですね!?」


「人聞きの悪いことを言うなっ!シールを集めているのは知っていたが何のシールかは言わなかっただろうが。
 だいたい、人の話を聞いていないのはいつも君の方で・・・」


小言を言い始めそうになって、高野はふと気がついた。


「ちょっと待て!ま、まさか君・・・アロマキャンドルをこの家でやるつもりか?!」


「え?」


キョトンとする蛍にいやでも顔が青褪める。


暇さえあればゴロゴロと寝ている干物女が、キャンドル。


想像するに、なんて怖ろしい。


「アホ宮。」


「はい?」


「君は、この家を燃やす気か?」


「・・・は?私はキャンドルじゃなくて、このジャンボサイズの抱き枕が・・・・・・って!どういう意味ですかっそれ!!」


「なんだ、抱き枕か・・・」


噴気している蛍をよそに、高野はホッと溜息をつく。


けれど、あんまりな物言いをされた方からすれば溜息どころの話ではなく。

目元を赤く染めた蛍は、


「ぶ、部長なんて・・・ぶちょおなんてっ・・・!」


もう本当の本当に、大ッ嫌いですーーーーっ!!!


いーーっだ!!と子供のように口を尖らせて地団駄を踏み鳴らし、自室へと閉じこもってしまった。




残った高野は、ポツンと一人呆気に取られる。やがて深い溜息。


ああまったく。


大嫌いでも結構だけれど・・・。


言われたらやっぱり、胸は重い。







「あれ?部長。今日もお昼はコンビニですか?」


「・・・・・・ああ・・・」




本当はいつだって、彼女一人に一喜一憂、してるのだ。








おまけ。





「部長っぶちょおっぶちょーーーっ!」


居間に置いてある台紙にこっそりと増やしておいたシールを見たのだろう。

ぴょんぴょんと飛び跳ねながら蛍が駆けてくる。

五月蝿いと眉を顰めるのもお構いなしに、タックルをかまして、そのままピッタリと引っ付いてきた。

ついさっきまではろくに口も開こうとしなかったのに。現金な奴だと彼は思いながらも、


「本当の本当に部長が一番ッ大好きです!!」


えへへ〜っと嬉しそうに引っ付いてくる笑顔に、彼は、

諦めたような安心したような・・・そんな表情で、小さな苦笑を浮かべた。



「・・・あっそ」



大好きでも、構わない。けれど胸は、ふわりと軽くて少し熱い。


無意識に綻んでしまう表情をどうすればいいのかわからなくなるくらい、

彼女一人に一喜一憂しているのだ。






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う、う〜ん。中身以上にタイトルをどうにかしようよ、私・・・。

も、もう軽く流してくれたら、ありがたいです・・・。

要さんと優香さんのカプも、なかなか好きです。(書かないですけど。)

優香さんはかなり好きです。性格というよりかは、声とか仕草とか言動とかが何気に可愛くて好きです。

だんご虫!!・・・うん、可愛い人だよ。うんうん。