部屋の前まで来ても往生際の悪いガキみたいに嫌がる晴季を無理やり中へと押し込めて、
靴を脱ぐにももたつく足を蹴りつける。

「さっさと脱げ」

「痛っ・・・まっ、待って・・・っ待ってよ・・・っ」

半泣きの顔で恐々と足を床に付くのを見届けながら、後ろ手にガチャッと鍵を掛ける。

俯き加減に視線だけをキョロキョロさせているのを見つめながら、苛つかせるお前が悪いのだと胸の奥で毒ついた。




毎日のように図書室へと通っているのは知っていた。

だからといって、どこのストーカーだと言われるようなことをしていたわけじゃない。

ただ偶然にも図書室へと向かう姿を見かけてしまったのだ。

僅かに覗いた黒くて丸い目が、控えめにも嬉しそうに輝いているのを見てしまった。

その瞳を自分の元に引きずり込んで、怯えさせて。

そんな歪みきった感情に手が伸びそうになるのをその時は見てみぬふりをして、やり過ごした。

たとえたかが本一冊だったとしても。

あいつの頭の片隅に未練がましく残るのは、許せなかった。



「いつまで読んでんだよ・・・」

時間を確認しながら、チッと舌を打つ。

眠気だけが襲う静まり返った廊下で、いい加減イライラしだした頭にガタリと椅子をひく音が響いた。


『あ、ありがとう・・・ございます・・・!』


室内に目を向けた瞬間、高揚したように頬を染めるその顔を見つけて、目の前は一瞬にして怒りに染まった。







「1人暮らし・・・なの・・・?」

奥の方にベッドが見えるワンルームの広い室内に、晴季が思わず呟く。

当たり前のように家族と過ごしている晴季には新鮮に見えたようで辺りを見渡している。

ただ、鞄を抱えた腕だけはギュッと力が入ったままで、

その細い腕にバイクに乗っている時に感じた感触を思い出した。


細くて頼りない腕が自分だけにしがみ付いて離れない状況が、堪らない。


「馬鹿か。じゃなきゃ女連れ込めねーだろ。」

湧き上がる衝動に、無理やり腕を掴んで近くのソファに座らせる。

「っ・・・な、に?・・・掃除とか洗濯とか」

させられるんじゃないかと思っていた晴季は、肩を抱いてくる手にビクビクした。

「鈍くせぇ奴がまともに出来んのかよ?」

手から伝わる震えと彷徨わせる黒目がちな瞳に、肩を抱く手が自然と強くなる。

「っ・・・だ、だから無理だって・・・言った・・・」

その手の感触に晴季は首を竦めて小さくなると、怯えきった顔で太腿の上で震える手をギュッと握り締めた。


「じゃ、あ・・・なにっするのっ?」

元より子供っぽい声が、ますます舌足らずに空回る。

「・・・女の代わりだって言ったろ。覚えわりーな」

ガッチリと腕でホールドしながら、黒川は晴季の首もとのネクタイを解き、シャツのボタンに手を掛ける。

「だから、なにっ・・・っ!」

晴季は本当に何が何だかわからない顔でただただ戸惑いの声を上げる。

「ちょ・・・っ」

ボタンを外しにかかる手を慌てて退かそうとするも、いきなり背中を肘掛に押さえつけられた。

どさっと音がして、視界に部屋の天井が映る。

「な、に・・・?」

「家に女連れ込んですることっつったら、一つしかねぇだろ」

「え・・・?」

見上げた顔は、ひどく真剣な顔をしていて。


「−−−っ、ぅんっ!!?」


見下ろす方は、自分の下で目を見開く小さな身体に欲を込み上げさせ、唇へと噛み付いた。







柔らかな唇をなぞり、逃げようとするのを髪を掴んで封じ込め、口内を舌でくまなく掻き回す。

「ふっ・・・ぅ・・・やっ・・・!」

激しい口付けと髪を引っ張られる痛みに目元を涙で濡らしながら、眉を苦しげに寄せる。

濡れた音を響かせて一旦解放すれば、晴季は夢中で頭を振った。

「やだっ・・・やだ・・・!こんなの変だよ・・・っ!」

目元も口元も涙と唾液で濡らしながら、浅い息を吐いて泣く。

ガタガタと震えたその身は、キスの間中弄られたことで制服は乱れ、ベルトも外されて、

下着ごとズボンをズルリとずり下げられた。

「うそッ・・・や、やだっ・・・・!」

「変でも出来んだよ。」

青褪めた顔でズボンを引き戻そうとする手を払いのけて、膝下まで下げる。

外気の冷たさと溢れ出る羞恥心に晴季の太腿が引き攣った。


変どころか、自分が狂っていることなんてわかっている。

いくら華奢で白くて柔らかいといっても、男にマジで欲情して、滅茶苦茶にしたくて堪らなくなる。

確かに他の男ならば、代わりには到底なりはしないし、する気もないのだが。


そもそもの元が晴季なのだから当然。それが何だと冷めた顔を向けられて、晴季は恐怖に凍りついた。







「う・・・ぅ・・・嫌、いやだよ・・・っ」

嗚咽を吐きながら、晴季は黒川の腕の中で首を振った。

ソファに座る黒川の膝の上に横向きに乗せられて、下肢にある自身を弄られる。

他人に触れられたことのないそこはわずかに蜜を滴らせながらも痛みと恐怖に震えていて。

晴季の顔の方が、涙でずっとグチャグチャだった。

「気持ちよくしてやってんだろ?」

「ひ・・・っ・・・やっ・・・ぁっ・・・ああっ」

唇に噛み付きながら、包み込んだ手を上下に摩り上げる。

手の動きに合わせて浮き上がっていく腰に口元を歪め、先端に指をかけた。

「ぅああっ・・・いやあっ」

グリグリと刺激すれば、痛みと快楽が混ざった悲鳴を上げる。

「気持ちいいだろ?」

「や、だ、・・・ヤッ・・・アッ・・・あぅンっ・・・」

濡れた音を響かせながらその顔をじっと覗き込めば、

内股をビクビクと引き攣らせて、唇を戦慄かせて涙を浮かべる。

快感と恐怖が入り混じった瞳が、堪らない。

もっとめちゃくちゃにしてしまおうと速度を上げて擦り上げれば、太腿が跳ねるように痙攣を起こした。

背中へと駆ける快楽の波に、もう何も考えられなくなる。


「ふっ・・・あ、あっ・・・っ」

グチュグチュと濡れた音が、ゾクゾクと耳の奥を震わせて。

腰から背中へと這い回る快感に、晴季は甘い声を上げて我を忘れたように腰を揺り動かした。


「すげえヤラシイ顔・・・」

「んっ・・・ふぅんっ・・・」

頬を舐められながら、激しく下肢を刺激されて。

晴季はゾクゾクと全身を震わせながら、やがて腰を跳ねるように震わせて、

ビュクビュクと手の中に白濁のものを弾けさせた。



突き抜ける快楽の波に、何もかもが薄れていく。



「−−−・・・はるき・・・」


ビクビクと震えながら浅く熱い息をして沈むその耳元で、優しく名前を呼ばれた気がした。







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