枯れ葉舞う帰り道




最悪だ・・・。


ある秋の放課後。ハラハラと葉が舞い落ちる並木道で、
大野は思わず天を仰いだ。


なんで俺が、こんなことしなきゃなんねーんだよ・・・。


隣には、冬田。そんでもって、俺と冬田の手は繋がれてる。


けして好きで繋いでるわけじゃないっ!!


冬田には悪いが、

ホントに・・・

最悪な日だ。



はじまりは、休み時間に話しかけてきた、さくらの一言だった。

「ねぇ〜大野くん。あのさー、冬田さんに頼まれたんだけどねぇ」

「冬田に〜?」

その時から、嫌な予感はしてたんだ。

そして、次の瞬間、予感は見事的中してしまった。

「うん・・・。秋はロマンチックだから、大野くんと手をつないで、
 並木道を歩きたーーいって、いってるんだー」

「じょうだんじゃねーよっ!!なんで、俺が冬田と手をつないで
 あるかなきゃなんねーんだよっ!!」

「だからさー、あんたも知ってるとおり、冬田さんは
 あんたのことが好きだからそうしたいっていってるんだよっ!!
 なにも、つき合ってくれっていってるわけじゃないんだしさー」

そういう問題じゃねーだろっ!!

たしかに冬田には、前に好きだとか言われたことがあった。
もちろん、冬田のことは好きじゃなかったし、今はそんな恋だとかより、
遊んでるほうが絶対楽しかったから、きっぱり断ったはずだ。

大体、女と手をつないで歩くなんて、相手が冬田じゃなくてもごめんだっ!!

マジ、冗談じゃねーーー!!

そう思っていたのに、教室に戻ってきた杉山が大笑いをして、
やってやれよ、なんていいだすもんだから、
俺は頭にきて、いらぬことをいってしまったんだ・・・。



「よし、わかった。やってやるっ!!」

「お!!男だねーー!!」

「ただしっ!杉山とさくらも手をつないで
 俺らのあとをついてくるんなら、やってやる!!」

「「え゛ぇーーーーーっっ!!」」

「どうだっ!!人のことだと笑えるけど、
 自分のこととなると笑えないだろ!!」

「う゛・・・・」

「・・・そうだな・・・笑えねーな・・・・・・」

「・・・ホント・・・笑えないよ・・・」

ハハッ・・・と乾いた苦笑いを浮かべる2人に、
勝ったと確信したのもつかの間、突然現れた冬田に、
事態は思わぬ方向に行ってしまった・・・・。

「ーーーーそんなこと言わないでちょうだい!!」

「ふ、冬田さんっ?!!」

「お願い、さくらさんっっ!!私のために!!杉山くんもっ!!」

「・・・・・・・・・・・・」

(こ、ことわれよーーーおまえらーーーっ!!)

(ど、どうしよう・・・。杉山くん、断ってくれないかな・・・)

(どうするよーー・・・さくら、断ってくれよ)

「お願いっっ!!!」

(お、おいっ!!早く断ってくれーー!!)

(・・・杉山くん・・・・)

(・・・・さくら・・・・・)

「・・・・・・・・・・・・」

「お願いっっっっ!!!!」

((・・・・・・・・・・))

「「・・・・・・・・うん・・・・・」」

(お、おいっっ!!!
 な、なんで、ことわんねーーーんだーーーー!!!)

「ほんとっ!!ありがとうーーー!!」

(・・・・・・・・・・・・・・)

「大野くんっっ、よろしくね!!」

「・・・・・・・・おう・・・・・・・・」

・・・・最悪だ・・・・・・・。

「ばかっっ!!なんで断んねーんだよ」

「だ、だって・・・あたしは、杉山くんが断ってくれると思って・・・」

「・・・・俺は、さくらが断ってくれると思ってぜ・・・・・・」

「女の子同士だと、いろいろ問題があるのー」

「・・・しょうがねーーよな・・・
 さくら、便所いったあとはしっかり手洗えよ・・・」

「・・・うん・・・それだけは、絶対に忘れないようにするよ・・・・」

「・・・・・・・おれらって、度胸はあるのに、
 けっこうお人好しなんだよな・・・・・」

「・・・そだね・・・・」


「「「・・・・・はぁ・・・・・・」」」


ああ・・・・なんで、俺はあんなことをいっちまったんだ・・・・。





そして、放課後。並木道の入り口。

「さ。大野くんっっ!!」

「う゛っ!!」

つ、ついに来てしまった・・・・・・

こうして、俺は手をつなぐことになってしまった・・・・。

こうなったら、とっとと終わらせるしかない。

だが、ただ黙々と歩く俺の耳に、後ろの2人の話し声が聞こえてきた。

「もうしわけないねー。あたしが、こんな頼まれ事をしちゃったばかりに・・・」

「気にすんなよ。オレ達だって、断りきれなかったんだからさー」

「あんた、いい人だねぇ。あたしが、百恵ちゃんくらい美人だったら、
 杉山くんも少しは嬉しかっただろうに・・・すまないねー」

「そりゃなー、百恵ちゃんぐらい美人だったら、少し位じゃなくて
 すっげー嬉しいけどさー・・・そんなこといったってしょうがねーだろ・・・」

「おっ!!さすがっ、あきらめいいねーー!!それでこそ、男だよっ!!」


「・・・・・・・・・」

なんだよ・・・。なんか、笑い声とかが、すげーカンにさわるんだけど・・・

「・・・お前ら、話しが弾んでるじゃねーか」

チラッと後ろを見たら、やけに楽しそうにしてやがって、なんかむかついてきた。

おまけに、顔見合わせて、意思通じ合わしたみたいに、笑顔向けやがった。

「そりゃぁもうー」

「大野と冬田よりは、話が弾むだろうさーー」

「「なぁ〜〜」」

お互い手繋いで、声そろえやがってっ!!

「大野くんっ。あんたも、おしゃべりしてやんなよー」

「そうだぞーー」

こ、こいつらーーーーっっ!!

マジ、イライラするっ!!

・・・・でも・・・バカにされてることより、
なんかさっきから変なような・・・?

「ねぇねぇ、落ち葉ってとってもロマンチックね」

「え?そうか?」

「・・・」

「みて、だんだん日が暮れてきたわよ」

「そりゃ、夕方だからな」

「・・・」

「夕焼けって、きれいよね」

「まあな」

「・・・・・・ねぇ、大野くん。もっとニコニコしてよ!」

「え、やだよっっ!!」

別に楽しくもないのに、ニコニコできるか・・・。

それに、俺はさっきからイラついてんだよっ!!

また後ろの2人が笑い出してやがるしっ!!

チラッと後ろを見たら、マジで楽しそうに笑ってる2人が見える。

さっきからずっと頭ん中に、さくらの笑い顔と声と
つながった手が嫌にちらつくんだよな・・・

(べつに、どうでもいいじゃねーか・・・)

なんで、2人にも手をつなげっていっちまったんだよ・・・

(あ?だから、べつに2人がつないでたって、俺には関係ないだろ・・・)

そんな楽しそうに笑ってんなよ・・・
大体、さくらの奴、なんで冬田の頼みなんて引き受けてくんだよ。
嫌だって思わなかったのかよ・・・俺はすげー嫌なのにっっ!!

「・・・・・・・っ!!」

(・・・な、なんだ今の・・・
 お、俺、今すげー変なこと思わなかったか・・・?)

(べ、べつに、さくらがどう思おうと関係ないだろっ!!)

(・・・って、俺、さっきからさくらのことばっかりなような・・・・)

(・・・・・・・な、なんだ・・・?)

結局一晩中、わけわかんなかった・・・・。



・・・・・・・・やっぱり最悪だ・・・・・

次の日。

なんとなく、さくらと顔をあわせずらかったのに、
突然さくらが突進してきた。

「す、すーぎぃーやーまーくーーーんーーー!!!」

おまけに、杉山の名前なんか叫びながらだし・・・

「す、杉山くんっ!!お願いっ!!」

「なんだよ・・・、
 まさか、また誰かと手をつなげっていうんじゃないだろうな」

「そのとーりなんだよっっ!!!」

「「・・・え゛っ!!」」

「お願いっっ!!かよちゃんと手をつないで帰ってあげてっ!!」

「や、やだよーー」

「昨日のことで、かよちゃんが誤解しちゃったんだよーー」

「誤解?」

「うんっ。あたしと杉山くんが手を繋いで帰ってるのみて、
 つき合ってると思っちゃったんだよー」

「・・・・・・・・」

さくらと杉山がつき合ってるーーー?!?!!

そんなの冗談じゃねーーー!!

「杉山。やってやれよー」

そうだ、そうしてバカな誤解を解けっ!!

「・・・だったら、お前とさくらもまた手をつなげよ。
 そうしたら、やってやる」

「「えっっ!!」」

さくらと手・・・・・?

(手をつないでなんて、もう・・・)

・・・でも、さくらと・・・・・

(・・・・・・・・)

「・・・やるよ・・・」

「え、お、おいっ、さくらっっ?!?!!」

「・・・大野くん、お願いっ・・・
 杉山くんも、かよちゃんと帰ってあげて?」

「「・・・・・・おう・・・・」」

・・・・・・さくらと手・・・・・?

ドキ・・・ドキ・・・・

(・・・って、なんで俺は、ドキドキしてんだーーーっっ!!!!)



またまた放課後。

そして、今日も俺は手をつないでいる。

相手は、冬田ではなくさくらだ・・・。

「大野くんもついてないね、昨日が冬田さんで今日があたしなんて」

「まぁな・・・ついてるほうじゃねーと思うよ・・・」

「わるいね・・・」

「しょうがねーだろ・・・」

そんなこといいながら、実はさっきから変だ・・・・。

やけに緊張してるし、握るときなんか、
かなり力入れてるのが自分でもわかる。

おまけに、心臓が大きくなりっぱなしだ・・・。

悟られないように、平常心を装うのがやっとだし。

「お前、人の世話やくのいい加減にしろよな」

もう、お前からあんな頼みされんの嫌だから。

(・・・だからなんで、嫌なんだよ・・・・・)


「ふあぁぁぁぁーーー〜〜〜〜〜〜!!!!」

「「?!?!?!」」

な、なんだっっ

「あ、あれっ今の冬田さんだっ!!
 ・・・あたしたちのこと誤解したんだね・・・」

「ああ、そうかもな・・・でも俺はもう断るからな」

引き受けたら、またさくらと杉山が手をつなぐことになるかもだし。

そんなの絶対に嫌だ・・・。

(・・・じゃなくて、もう一度冬田と帰るのはごめんだ)

「もう誤解されたままでいいよね・・・」

・・・誤解・・・?

それは、つまりさくらと俺が・・・・・・・

(・・・・ッッ!!!)

な、なんだっ。顔に熱が集まってきたぞっ!!

やばいっ!!って、なにがやばいのかわからないけど、
とにかく顔を隠したくて、帽子を深くかぶり直した。

「うん。またこんなことしたくないもんね・・・」

なんだ、さくらは今も嫌なのか・・・?

「ああ・・・もうごめんだ・・・」

(・・・なに、傷ついてんだよ・・・)

「・・・・・・はぁ・・・・」

なんか、一気に最悪になった気がする・・・。

「どうしたの?」

「・・・・・・べつに・・・・」

もう手も放れたし、またつなぎ直すのも変だよな・・・

(・・・でも・・・もう少し・・・)

「大野くんっ!!杉山くん達、先行っちゃってるよっ!!
 ほら、早くいこっ!!」

「ーーーーお、おいっっ!!・・・手・・・」

「?ーーーあ、もう手つなぐの嫌?」

「そ、そんなことねーけどっ」

「えへへ、よかったっ!!並木道まだ続いてるし、なんか
 もう少し一緒に手つないで歩きたかったんだよね。そのほうが、楽しいでしょ?」

「ッッ!!!」

(い、今のセリフと笑顔は、反則だっっ!!
 か、可愛いなんて思ってしまった・・・!!)

(・・・でも・・・)

「・・・まぁ、たまにはいいかもな・・・」

「えー?大野くんがそんなこというなんてっ!!
 やっぱ秋はロマンチックになるのかねー」

「なんだそりゃ・・・」

「落ち葉が舞って、切なくなるってことっ」

「・・・そうだな・・・。でも今は、楽しいんじゃねーの?」

「うんっ!!並木道もきれいだしねっ!!」

「ああ・・・そうだな・・・」

(昨日は、そんなことちっとも思ってなかったのにな・・・)

なんでだろうな・・・・





パラパラと散る並木道の中、さくらと手をつないで歩いた。



今日は、何故かいつもより落ち葉も夕日もきれいに見えた・・・。







その意味を知るのも、もう一度この2人が手をつないでこの場所を歩くのは、
まだもう少し先のこと・・・・・・。





あとがき。

セリフはほとんどが、アニメと同じです。

大野くんの葛藤(笑)と後半の方は、大体私の妄想になってます。

でも、最後の方の帽子を深くかぶって顔を隠すシーンは、アニメにもあります。

絶対、照れ隠しで隠してるとしか思えません。
普通に見てても、隠す意味がわからないですし・・・。



省きましたが、アニメでは、みぎわさんからも頼まれてしまって、
花輪くんとまる子のシーンと、花輪くんの車に乗って、
ドライブに行くみぎわさんのシーンなんてのもあります。





この小説で、少しでも大野くんとまるちゃんを
好きになってくれたらと思います。