突然現れた「おかしな女」は、たった数日で「気になる女」になった。 気がつけば目で追って・・・姿を、声を無意識に捜して・・・ 名前を呼ばれる度に、あの大きくキラキラと輝く瞳に見つめられる度に 静かにただ生きるためにしか動かなかった心臓が、意味もなくフル回転を始める。 そしてその意味に気づいた時には、もう自分でも抑える事の出来ない想いを抱いていた。 誰にも・・・渡したくない・・・。 愚かな想いかもしれない。けして・・・抱いてはいけない想いだったかもしれない。 でももう後戻りはできない。 腕を引いて、小さく華奢な身体を腕の中に捕らえて、 二度と離れないように彼女の美しい自由の翼を奪って、 二度と逃げ出せぬように、家という名の鳥籠に、鍵を掛けた。 自分でも醜く汚い欲望と知りながらも、止める事の出来ない想いだったから。 そんなの愛じゃないと言われても、この想いがどんなに歪んだ愚かな想いだとしても もう・・・無くては・・・ならないものだから。 どうして・・・?と泣く彼女の瞳に、締め付けられるような苦しみを味わっても それは深く深く沈めて、気づかないふりをし続けた・・・。 けれど・・・いくつかの日が流れ、彼女は・・・変わっていった。 自由を奪い、笑顔を奪い、涙だけしか与えることしか出来なかった日々のはずなのに・・・ いつのまにか彼女は・・・苦痛でしかないはずの狭い籠の中で、またすべてを元に戻し始めていた。 あの頃のような大きな笑顔ではないけれど、窓を覗きながら・・・小さな笑顔をそっと浮かべて・・・ この鳥籠の中で、彼女は・・・・・・元の場所へと戻れるようにと・・・。 そう感じた時・・・やっと愚かな自分を認めた気がした。 どんなに鍵を掛けて閉じ込めても・・・彼女自身のすべてを閉じ込めることなど出来ないんだと・・・。 勝手に彼女の自由を奪い、すべてを自分のものに出来たと馬鹿な思い上がりをしていただけ・・・。 きっと彼女は・・・また大きく真っ白な綺麗な翼を自らの力で取り戻して、この壊れかけた籠を壊して、 もう二度と手の届くことの無い・・・遠くへと飛んでいってしまう・・・。 その飛び立つ後ろ姿を思い描きながら、そっと小さく笑顔を浮かべたら・・・一粒の涙が頬を伝った。 鮮やかに輝く眩しいくらいの光の中へ、大きな翼を広げて飛ぶその姿は どんなものよりも美しく、綺麗で・・・。 そんな光に包まれた彼女を・・・・・・愛していたんだ。 いつのまにか・・・自分が何も見えない真っ暗な暗闇の中に落ちていて、本当の光を見失っていた。 真っ白な明るい場所にいても・・・霞むことのないほどの美しさ。それが・・・彼女だった。 そんなの愛じゃないといっていたのも、この想いが歪んだ愚かな想いだと一番思っていたのも、 全部自分自身だった。 偽り隠し続けた胸の痛みも、愚かな自分も・・・全部認めて・・・ そして・・・近いうちに必ず訪れる自分の元を去っていく彼女の後姿を・・・ きっと自分は・・・ただ静かに見つめ続けるだろう・・・。 自由に・・・あの頃のように・・・大きくて暖かな優しい笑顔でいて欲しい・・・。 自分にとってなによりも・・・生きるよりも、呼吸するよりも・・・大きな存在だったから・・・ きっと彼女が飛び立ったあと・・・自分の時間は止まってしまうかもしれないけれど・・・ それでも彼女への想いだけは・・・彼女を愛している・・・この気持ちだけは・・・ けして・・・・・・止まることはないだろう・・・・・・。 たとえ彼女が忘れてしまったとしても・・・それでも・・・ずっと・・・・・・ 愛し続けていたいから・・・・・・・。 ズット・・・ズット・・・アイシテイルカラ・・・ ・・・いつか来るその時に・・・彼女の翼が痛まぬように・・・ 鍵を取り去り、窓を・・・・・・開け放とう。 暖かな風が眠る彼女の髪を揺らして・・・一羽の小鳥がそっと彼女の頬を突くのを見つめながら、 少しの切なさと、少しの寂しさと、多くの優しさと穏やかさを感じて・・・そっと・・・微笑んだ。 あとがき・・・ これは、もともとはオリジナルのほうで考えてあるもので、 それをごくせん・・・というか、慎に合わせて作ってみたものです。 これだけでは、ちょっと悲しい恋のお話っぽいですが、裏設定?としては、 久美子は大きな翼をまた生やしても、鍵を外しても、遠くへと飛んで行くことはない・・・ ってことも考えの中にあったけど、とりあえずこんな感じで終幕としました。 もっと文才があれば・・・とかなり思った作品です。 自分で妄想しているときは、かなり切なくて自分で考えながら泣きそうになるほど いろいろ想像したのに、ほんの一部しか文に出来なかったのが、悔しいです・・・。 |