ドラマ放送当初(1話のすぐ後ぐらい)に書いたものなので、竜がだいぶ違った感じになってます。


竜クミ

ジャージにおさげに眼鏡・・・。なんでそんな色気のねー格好してんだよ。

あの時・・・すげーつえーって思うよりも、すげー綺麗だって思った。

こんな綺麗な女みたのなんて初めてで・・・身体の痛みさえも忘れるほど、この女に見とれてたんだ。

なのに、なんでそんな格好なんだよ・・・。

「小田切?」

「・・・・・・・・」

「おいっ・・・お前、さっきからなんだよ。人の顔ジッと見て」

「あんたさ。せめて眼鏡だけでも止めたら?」

ジャージはとりあえず身を守るためとして妥協するけど。

「なんで?」

「・・・・・・・・・」

綺麗だから・・・。なんていえるわけないだろ。

「なんでそこで沈黙するんだよ。・・・・・・そういえば、あいつらもそんなこといってたな。」

「あいつら?」

ふっと一瞬どこか宙を見上げて、呟いた言葉がやけに気になった。

「ああ。私の可愛い元教え子!・・・あいつらも最初はすっごく荒れてたよな・・・」

そういって、懐かしそうに微笑んだ顔にズキリと何かが痛んで、妙にむかついた。

「眼鏡取れだの、髪触らせろだの。・・・そういやなんであいつら、あんなことばっかりいってたんだ?」

・・・なんだよ、それ。髪触らせろ?普通、センコーにそんなこといわねーだろ。

どんな生徒もってたんだ、こいつ・・・。

「そうそう、いわれるだけじゃなくて、いきなり眼鏡取られたり髪触ったりしてきたこともあったな。
・・・まったく、私はオモチャじゃないっ!ってよく怒鳴ってたもんだ」

ハハハ〜って・・・それ、そんな笑い事じゃないだろ?

・・・そいつらも俺と同じでこいつの素顔が見たくてそんなことしてたんだよな・・・。

髪も束ねられてると見落とすけど、なんかすげーサラサラ?

俺も触りてー・・・。

もう一度でいいから、あの綺麗な顔が見たい。

「−−−・・・え?お、おいっ!お前までなにやってんだよ!!」

「その元生徒にもさせてたんだろ?だったら俺にもさせろよ」

「な、なんだよっそれはっ!まったく!いまいちなに考えてんだかわかんないところは沢田にそっくりだなっ!」

「沢田?」

呆れたように呟いた言葉が、また妙に・・・いや、堪らなく引っかかった。

あんたは俺らの先生なんだろ?俺のこと信じて守るっていってたじゃねーか。

そんな元教え子と一緒にすんなよっ・・・。

なんかすげーむかつく。わかんねーけど、むかつくな。

「−−−−痛っ・・・ちょ、ちょっと小田切、力入れすぎ。髪抜けたらどうすんだよっ!!
つかんでんのはべつにいいけど力いれんなっ!!」

つかんでんのはいいんだ。

「なあ、眼鏡ないあんたの顔見たのって、今の生徒じゃ俺だけ?」

「え?う〜ん・・・たぶんそうじゃないか?」

「だったらあんた眼鏡外すなよ。」

「は?」

今は・・・俺だけだ。

俺だけが知ってる。綺麗なあんたの姿。

昔のやつらにもむかつくけど、そんなこと気にして今の奴らに先なんてこされたくないからな。


でも昔のことも気になる。

「そういえば、あのラーメン屋のやつって元教え子の一人か?」

「クマのことか?ああ、そうだぞ」

数時間後。

「いらっしゃいっ!って、おお・・・お前、確かヤンクミの」

「・・・どうも」

きっちり探りいれてたりする。


終。



次はもっと古いお話。私的にはお気に入り・・・。


「手をつなごう」(慎クミ)

手に触れたい。その白くて細くて暖かい、優しい手に触れたい。

触れて、触れて・・・指を絡ませて、手をつなぎたい。

「沢田?」

偶然を装った帰り道。並んで帰る帰り道。

小走りに先を歩こうとする彼女の手を捕まえて、ギュッと力を込めて・・・。

手の感触とぬくもりと一緒に、この想いも伝わればいい・・・。

「どうした?」

キョトンっと首を傾げる彼女の仕草に鼓動を弾ませて、手をつないだまま少し早く歩き出す。

ひっぱられるように歩き出してクスクスと笑う彼女の可愛い笑顔に、得意のポーカーフェイスも崩れそうだ。

こんな暖かな日が、ずっと続けばいい。こんな瞬間が、永遠に続けばいい。

想いと一緒に。ぬくもりと一緒に・・・彼女への気持ちは、日々膨らんでいく・・・。

いつかきっと・・・伝わることを願って・・・膨らんでいく。