「突然ティッシュ箱」番外編 〜もしも日向クジだったら・・・隼クミバージョン〜


「ぎゃっ?!」

お昼休み。廊下を歩いていた久美子は、突然、腕を引っ張られた。

そのまま空き教室に引きずり込まれ、またまたいつものパターン通り、壁と隼人に挟まれ状態。

おまけになんか。

ものすごく隼人の機嫌がよろしくないらしい・・・。

「・・・あの・・・矢吹?・・・ど、どうした・・・?」

「・・・これはどういうことかな?・・・山口先生?」

引きつった笑みで隼人が出したのは、一枚の写真。

そこには、久美子と日向が仲良く手を繋いで歩いてる姿が写っていた。

「なっ・・・なんでお前がっそれをっ!?」

(日向の奴っ内緒にしろっていったのにっ!?)

咄嗟に手を伸ばそうとした久美子の手を、隼人はガシッと掴み上げ、壁に押さえつける。

「・・・・・・ずいぶん仲がいいじゃねーか・・・・・・あ゛ぁ゛?」

「お、おおお落ち着つけっ?矢吹っ・・・こ、ここここれにはッんぐっ!?」

グイッと近づいて、久美子の言葉を遮るように唇を奪った。

持っていた写真を放り投げて、さらに口付けを深くする。

「・・・っ・・・んっ・・・・はぁ・・・ちょっ・・・・っまてってっ・・・・・んんっ・・・」

それでもなんとか抵抗しようとする様子に、隼人は苛立ちげに唇を放した。

「・・・はぁっ・・・おっ・・・おまえはっ・・・なんでそうっぼっ暴走するんだっ・・・」

真っ赤な顔と潤んだ瞳が可愛すぎっ!

なんて思いながら、片手で腰を抱き寄せて、その髪や頬を撫でたり、キスしたり。

「・・・っ・・・やめろっ・・・バカっ・・・」

くすぐったそうに身を捩る久美子をより一層抱きしめて。

苛立ちも治まりそうな頃。不幸にも、チラリと視界の隅っこに写真が入ってしまった。

途端に、激しい苛立ちが膨れ上がる。

「・・・てめー・・・あいつともしてんじゃねーだろうなっ・・・」

「え・・・?」

いつもは可愛い間の抜けた声も・・・嫉妬に狂ってる男には、やばいらしい。

「え・・・っじゃねーよっ!?日向ともキスしてんかって聞いてんだよッ!?」

「んなっ!?なっなにいってんだっ!!そそそそっそそんなわけないだろっ!!」

恥ずかしさからか、いちだんと顔を赤くする様子に、さらにキレる。

そのキレる一瞬の隙をついて、久美子は隼人の腕から逃れた。

けれどそう簡単にはいかず。

「とっとととにかくっ・・・おおお落ち着こうっなっ!お、落ち着きがかか肝心だぞっやぶきっ!!」

隼人は背中を向けた久美子の腰を、ガシィィッッと引っ掴んでその身体に圧し掛かった。

「なぁに・・・逃げようとしてんの・・・?」

「べっ・・・べつにっ逃げてないぞっ・・・・」

ひぇ〜〜〜っ!?

久美子はもう、半泣き状態。

(どっどうするっ・・・どうすんだよ〜〜っ久美子〜〜っ・・・うぅ〜〜〜日向のバカヤロ〜〜っ)

「てめー今、日向のこと考えただろッ!?」

「なっ・・・か、考えてないぞっ!!これっぽっちもっぜーんぜんっ考えてないぞっ!!」

「マジであいつともしてんじゃねーだろうなっ・・・」

「だっだからっそ、そんなわけないっていってるだろっ!!」

「じゃあなんでこんなに仲よく歩いてるわけっ?!手まで繋ぎやがってっ!!」

ビシッと床に落ちた写真を指差した。

にっこりと笑いあってる姿が憎ったらしい。

自分だけが独占したいのに。

俺以外の奴が触るのだってむかつくってのにっ・・・。

俺だけじゃないのかよっ・・・・・・。

ふざけんなっ・・・。

「・・・手なんか・・・ホイホイ握ってんじゃねーよっ・・・・・・。」

ぎゅうっと強く抱きしめて、不貞腐れたように呟いた。

「・・・?・・・やぶき?」

その小さくて弱い声に、引き離そうとしていた久美子の手が止まる。

後ろから強く抱きしめられながら。

考えて。悩んで・・・。

不貞腐れる隼人に少し呆れて。自分には、それ以上に呆れて。

諦めたように溜息をついて。

久美子は恥ずかしそうに、言った。

「毎日毎日っキッキスされて・・・わっわたしはっそっそういうことはっ・・・おっお前っ一人でっ」

「・・・・・・十分?」

「違うッ!!!」

「思いっきり否定すんなよ・・・」

「うぅ・・・だっだからっ・・・てっ手が・・・一杯だからっ・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・日向のことはっ・・・ちょっと頼まれて・・・。でもっ本当に・・・なんでもないんだっ・・・だからっ・・・だから・・・そのっ・・・」

「・・・・・・俺だけ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

恥ずかしそうに。耳まで真っ赤にして・・・。

可愛く・・・。とんでもなく、可愛く。

コクリと、小さく頷いた姿に。一生懸命な言葉に。

隼人は苛立ちもスッキリと忘れ、幸せそうに、満足そうに、笑った。


やっぱり。

最高に。たまらなく。可愛い・・・。


(でも・・・今日から帰りは毎日一緒にするべきだな、やっぱ。)

(うぅっ・・・なんで私がこんな恥ずかしいことをっ・・・!・・・もうっバカヤローーーっ!!)