ぼんやりする・・・。


心が・・・身体が・・・。暖かくなってしまうから・・・。






「んぅ・・・もー・・・いい加減離せ・・・」


教室の床に座り込んで、腕の中に捕まっている久美子は微かな声を上げた。


「眠そうだな、お前」


覗き込めば、ウトウトとしたぼんやり顔で今にも眠ってしまいそう。


離せといいながらも、その手は服を軽く掴むだけで。身体も隼人に預けたままで。


腕の中の彼女は、やっぱり可愛い。


「・・・しょー・・・がない・・・だろ・・・?・・・きのー・・・寒くて・・・・・・」


微かに言葉を口にしながら、限界にきたのだろう。


久美子は瞼を閉じると、隼人の腕の中で眠りへと落ちていった。











「・・・んとに、ガキ・・・」


腰に回していた腕に力を込めて、隼人は小さく呟いた。


頬を摺り寄せて安心したように眠る久美子を見つめながら。


暖かいぬくもりを抱きしめたまま・・・。


隼人も誘われるように、瞼を閉じる。











あの男よりも。誰よりも。


俺の腕の中が一番幸せだと・・・少しぐらい、お前は思ってるのか?





俺を見て。俺だけを見て。


俺だけのことを考えてくれる日は・・・少しぐらい増えてるよな?








眠りにつきながら。隼人は久美子に問い掛ける。





微かに感じる彼女の想いは、自惚れかもしれない。


だけど、それでも。


離すことは。逃がすことは。一生、無い。


それは言葉じゃない。


想いが、そう感じてる。





離さないと。逃がさないと。





そして彼女は、一生・・・一生・・・腕の中。





自由を奪い。全てを奪い。


狂ったような想いを、深く暗く抱えながら。





隼人は久美子を・・・離さない。




















もうだいぶ日も沈みかけた頃、久美子はぼんやりと目を覚ました。


すぐそばにある隼人の身体に一瞬驚きながらも状況を思い出すと、床に寝ていた身体を起こして
思わず息をつく。


腰に巻き付いている腕に顔を赤くしながら、隼人の顔をそっと見れば、彼もすっかり眠りについていた。


眠りながらも力を込めて離そうとしない隼人の腕に、久美子の瞳が微かに揺れる。








寒くて眠れなかった昨日。


自分はなにを思った?


抱きしめられて。腕の中にいて・・・。


今日、私は・・・・・・なにを思った?





そうやって・・・。誤魔化しながら、曖昧に問い掛ける。


本当は知ってるのに。


腕の中の暖かさを。ぬくもりを・・・。誤魔化し続けてる。








いつか来る日が・・・恐いから。








強がり続ける。隠し続ける。深く暗い、彼女の想い・・・。





・・・いつまで・・・こうしていられる?





いつか来る日。訪れた日・・・。





その時、私は・・・この腕を忘れられる?





・・・強がり続けて。隠し続けて。





本当にしがみつきたいのは・・・きっと私・・・。





けして見せない。密かな想い・・・。





そっと腕に触れながら、久美子は・・・切なく微笑んだ。








この腕の中に・・・私は、いつまでいられるのかな・・・?







あとがき


えっと隼クミでは一番のシリアスでしたね。

ショート部屋の設定をご覧になってなかった方には、かなり突然な内容だったでしょうね。(苦笑)

隼人を書いたなら、久美子も書かないとかな?と思ったので、また急いで書き足してみました。

後々、久美子の想いも見え隠れさせるつもりなので、その前置きみたいな感じです。


「君の言葉」やちびまる子ちゃんの「恋の病」のように、とにかく私はこういった痛々しい感じの
想いが好きだったりします。

自分で書きながら、そんなことないよ、幸せになれるよ。と励ましたりするのも好きです。