「にゃんこでGO!」番外編 「Clumsy love」の隼クミだったら? 彼女はその日、にゃーにゃー(?)だった。 「にぎゃぁーーーーっ!?」 丁度一番最初に声をかけられた隼人は速攻で久美子を引っ掴み、にゃーにゃー喚く口を塞いで 家に持ち帰った。(・・・はたから見れば、ただの誘拐。ついでに監禁。) しょーがねーだろ?朝っぱらから、いきなり「おはようにゃっ!」だぜっ?! 可愛すぎだろっ!! んなの他のやろーに見せられるかっ!! (・・・だからって誘拐・監禁はまずいのでは・・・?) ちなみに学校へは、隼人が家の人になりすまして連絡済みです。 「に゛ゃーっ!!いいかにゃんにするにゃっ!!」 「いいじゃん。お前、可愛すぎなんだから」 父は仕事へ。拓は、学校へ。 二人きりの矢吹家では、朝っぱらからイチャつくバカップルの姿が・・・。 真っ赤な顔で「に゛ゃーっ」と突っぱねる久美子の姿に、隼人はにやけっぱなし。 腰を引き寄せて、顎を掴んで、何度目かのキスをして。 なんていい日っ! 俺、今っ!ぜってー世界一の幸せ者だなっ!! 「にゃーにゃー」も可愛いけど。 なによりも、こんなに時間もまわりも気にせずに久美子を束縛できるなんて初めてのことだ。 朝からずっと二人っきり。 久美子を溺愛しすぎてる隼人には、最高の一日である。 こんなに上手くいくなら、また時々お持ち帰りしちまうかな。とか、思ってたりもする。 久美子が最高かどうかは、彼には大した問題じゃないらしい。 「そーいやお前、なんでそんなしゃべり方なわけ?」 「しらにゃいにゃ・・・。・・・にゃんでこーにゃるにゃ・・・」 抵抗に疲れた久美子は、諦めたようにグッタリと隼人に体重を預けた。 「・・・にゃー・・・・・・・・・」 包み込まれる「ほわ・・・」とした感じに、安心したように息を吐く。 と、続いて、お腹がぐぅっとなった。 ハッとして、すぐさまガバッと身体を離す。 「にゃ・・・にゃたしじゃないにゃっ!!おにゃかにゃんてすいてにゃいにゃっ!!」 「空いてんだろ」 「ちっちがうにゃっ!!」 「朝食べてねーわけね?」 「にゃべっ・・・・・・にゃー・・・・・・にゃべてないにゃ・・・・・・」 嘘がつき通せなかった久美子は、居心地が悪そうに身を縮めて項垂れた。 二人しかいないのだから、嘘ついたってバレバレに決まってる。 それなのに、咄嗟に誤魔化そうとするのは久美子の性分なのか? それとも・・・二人きりになったって、こいつの心の中は・・・他の人間でいっぱい ・・・つーことか? 軽く髪に触れて、隼人は立ち上がった。 考えても無駄なことだ。 どちらでも・・・それが久美子なのだから。 けれど隼人は、諦めの溜息は吐かない。 諦めたら終わりだから。 少しでも僅かでも。その心に入り込めるのなら。動かせるのなら。 俺を見てくれるのなら・・・。 そのために行動するまでだ。 吐いてしまえば・・・入り込める場所も、動かせる力も、俺を見てくれる時間も ずっと限られて、少なくなってしまうから。 立ち上がった隼人は久美子に背を向けて、台所へと向かった。 居間に座り込んでいる久美子は、その背中を視線で追う。 「・・・なんもねーな・・・」 「にゃっ?いっいいにゃっ」 食料を探している様子に久美子は慌てて制止の声を上げた。 隼人は少し考え、居間に戻ってきた。 「・・・・・・にゃ?」 なぜか苦い顔をして見下ろしてくる隼人に、久美子は首を傾げる。 その顔にはさっき引っ付いてる時に取りあげておいたため、眼鏡はない。 不思議そうに見上げてくる姿に、グラリと決意が揺れるけれど。 一日は、まだ長い。 そう自分に言い聞かせると、隼人は久美子の顎をすくいあげて上を向かせると、 その唇にキスをした。 「にゃっ・・・?」 咄嗟に逃げようとする頭を押さえて、大きな瞳を覗き込む。 「にゃ・・・にゃんにゃ・・・?」 どこか思いつめたような真剣な表情の隼人に久美子は戸惑う。 隼人は一瞬殺気にも似た空気を放ち、そして低く囁いた。 「・・・絶対に逃げんなよ?」 「・・・・・・にゃ?・・・・・・にゃ・・・」 これ以上、なにか妙なことをするつもりなのか?こいつは・・・ と、思わず逃げ腰になる久美子だったが、すぐに手は離れた。 そして久美子を残したまま居間から出ていった隼人は私服に着替えて、また居間に戻ってきた。 「なんかあるか?」 「にゃ?」 なんの話を・・・? 「昼の分も買わねーとだしな。なんでもいいなら、適当に買ってくるぞ?」 「・・・・・・にゃっ!」 やっと意味を理解した久美子は慌てて腰を浮かせるけれど、それと同時に隼人の鋭い視線と 空気が突き刺さる。 「逃げたら・・・とっ捕まえて、一週間は出さねーからな」 そう言い残して、隼人はアパートを出ていった。 居間に一人残された久美子は、浮いた腰をペタンと下ろした。 犯罪者のような捨て台詞を残していった隼人に、苦笑いが零れる。 逃げるとか、逃げないとか・・・時々、隼人はそういったことを口にする。 確かに・・・腕やキスから逃げるのは事実だけど。 それとこれとは、まったく違うじゃないか・・・。 呆れながらも。 久美子は分かっていた。 そう思わせているのは、自分なのだと・・・・・・。 「・・・にゃー・・・・・・」 自分の口から出された声に、久美子は小さく微笑んだ。 続く・・・。 2は、こちら な、なんかアホ話のはずが、いつものシリーズものと変らない展開になってきてしまいました。 最初のハイテンションぶりはどこへ・・・? もうすでに「にゃんこでGO!」の番外編ではなくなってますね。これ・・・。 後半は、リクエスト頂きました「たまには、久美子に優しい隼人」が書けると思いますので。 このリクの隼人は、普通のシリーズ話でもお目見えしていくと思います。 |