突然ティッシュ箱 番外。竜クミ編+「臆病な恋」の続編? 注意。 この小説は、突然ティッシュ箱の番外なので「突然〜」の1の前半だけでも 目を通しておかないと、さっぱりな内容だと思います。 設定は、「臆病な恋」のその後の竜と久美子の関係になってます。 『小田切竜君の背後から抱きついて、「竜」って呼んでください。』 1時限目。授業のない久美子は、屋上に来ていた。 まだヒンヤリと肌寒い朝の風が吹くベンチに座る久美子の隣には、授業中だというのに 背凭れに背中を預けて座る竜の姿あった。 空を仰ぐ竜とは反対に、久美子は背中を曲げて肩を落として、はぁー・・・と深い溜息。 ジャージのポケットに入ってる紙切れの存在に、頭を悩ませていた。 もちろんちょっと・・・いや、かなり恥ずかしい気持ちもある。 名前で呼んだことなんてないし、ましてや自分から抱きついたこともない。 でも久美子は恥ずかしい以上に、心配なことがあった。 数週間前に、突然キスされ、告白され・・・。 頑張ってもいいんじゃないか?なんて、いってしまった相手に たとえ頼まれたからとはいえ、簡単にこんなことをやってしまっていいんだろうか・・・? (・・・いや・・・まずいだろ・・・・・) 頼まれてやったなんてことがもし知れたら、なんか傷つけてしまうような気がしていた。 「・・・絶対にまずい・・・」 思わずボソリと呟いた久美子に、今までチラリと様子を覗っていた竜の手が伸びる。 「・・・なにが?」 「っ!?」 突然頬に触れた指先に、久美子は一瞬ビクッとして顔を上げた。 じっとこちらを見てくる竜の視線に、かぁっと思わず顔が赤くなる。 「なっ、なんでもないっ・・・・・・」 慌てて手を振る久美子に、竜の顔に訝しげな表情が浮かぶ。 頬に触れていた手を腕に下ろして、グイッと引き寄せた。 「わっ・・・ちょっ・・・!?」 倒れこみそうになるのを何とか押さえる久美子だったけれど、反対側の腕を素早く掴まれてしまっては もう簡単には逃げ出せない。 「・・・なんか隠してんだろ」 すぐ近くでじっと見つめられ、久美子は必死で竜から視線を逸らす。 「な、なにも・・・・・・・・・」 思いっきり動揺しまくってる様子に、竜は少し眉を寄せながらも彼女の腕を離した。 ホッと息をつく久美子を横目に、制服のポケットに両手を入れて、座り直す。 「・・・べつにいいたくなきゃいいけど・・・・」 はぁ・・・と溜息とともに呟いた竜の横顔に、久美子は困ったように眉を寄せた。 言葉は素っ気無くても、絶対に酷く気にしてる。 きっとそうなのだ。こいつは。 普段クールで物凄く素っ気無くて、時々、告白されたのも気のせいか?夢か?なんて考えて、 そのうちうっかり?忘れた頃になって、物凄い強引な手段に出るんだ。 この男は・・・。 このまえなんて、昼休みにうっかり忘れて大して意識もしないで近づいたら、いきなり抱きしめられ キスされ、結局離してもらえずにそのうち寝ちゃって、気がついたら外は真っ暗だった・・・ なんてこともあったくらいだ。 素っ気無い時こそ、あとが危ない・・・。 (うぅ・・・あ〜・・・どうしよう・・・) ここは朝のことを話してしまった方がいいんだろうか? で、でも・・・・・・これこれこうゆうわけだから、させて?なんて明るく言える内容じゃない。 頼むには恥ずかしすぎる・・・。 うぅ〜・・・と考えること数分、久美子は恥ずかしさに頬を赤く染め、俯き加減で口を開いた。 「あ、あの・・・な・・・?・・・小田切・・・?」 「・・・ん?」 「お、お前って・・・・・・その・・・・・・・な、なななななな・・・・・・・・・・」 あまりの恥ずかさに声が震えてしまって、全然うまく言えない。 というか言葉にもなってない。 「落ち着けよ・・・」 竜はチラリと横目に映る恥ずかしそうに縮こまってる姿が可愛すぎて、 正直、物凄く抱きしめたいのだがそれをぐっと堪えていた。 「・・・ながどうしたって?」 「あのっだから・・・た、たとえば・・・っ!?」 そのとき、久美子はひらめいた。 そうだよ。たとえばの話をすればいいんじゃないかっ! 自分でするのを想像するから、恥ずかしいんだっ! 「そ、そうっ・・・た、たとえばだけどなっ?!たとえば、お前に彼女がいたとしようっ!」 「・・・彼女・・・?」 竜の視線が微かに鋭くなった。 たとえばといえど、そんな話久美子にだけはしてほしくない。 なんで好きな女にそんなことたとえられなきゃならねーんだ・・・。 きっとこいつは深く考えてないんだろうが、やっぱりむかつく。 「そ、それで、その彼女から、その・・・お前・・・名前で呼ばれたいって思うかっ?!」 「・・・・・・・・・・・は?」 久美子の問いに、竜はゆっくりと横に視線を向けた。 真っ赤な顔で俯いてる久美子を少し驚いたように見つめ、その可愛さに思わず顔が緩んでしまう。 (全然たとえばになってねーだろ、それ・・・) 久美子がどういう事情でそんなことを聞いてきたのかは知らないけれど、その質問をするのに こんなにも恥ずかしがってるってことは意識されてるってことになるんだろう。 それがたまらなく嬉しい。 「どうなんだっ?小田切っ?!」 真っ赤な顔で、切羽詰ったような表情で見上げてくる久美子に竜は嬉しさに緩む顔を堪えて言った。 「・・・べつにどうでもいい」 お前が言った、たとえばの彼女なんてどうでもいい。 そんな意味が含まれているなんて知るはずもない久美子は、とりあえずホッとした。 「・・・そっか・・・。お、お前は・・・そういうの気にしないタイプなんだな?」 こいつが気にしないのなら。後ろから突進して、ズバッと言ってしまえばいいんだ。 そうだ、そうだと俯いて頷く久美子だったが、ふいに視界に竜の足が見えた。 ハッと気がついた時にはもう遅く、いつのまにか目の前に立っていた竜に両肩を掴まれ、 ベンチに背中を押さえつけられていた。 肩を押すと同時に、竜も久美子に顔を近づける。 驚いて見上げてくる久美子に、少し意地悪な笑みを浮かべて、囁いた。 「お前になら、すっげー呼ばれてーんだけど?」 「っ?!」 かぁぁ〜〜っと真っ赤に染まった久美子に、今度は優しく微笑んで 竜は久美子の唇に、軽くキスをした。 1 終 2 へ あとがき また続いてすみません・・・。短いのに・・・。次で終わると思います。 なんか本編の隼クミ以上に、全体的に甘い気がする・・・。 たぶん久美子の反応なんだと思うんですけど、隼クミの久美子も、もちろんちゃんと 愛はあるんですよっ!ただ、年上風味でしょうがないな〜って感じだから表にハッキリ でないだけでっ・・・って・・・竜クミで隼クミの弁解してもしょうがないのですね・・・。 今回一番悩んだのは、最後の竜の「お前になら〜」ってセリフです。 全然うまいセリフが浮かばなくて・・・あれでいいんだろうかって気がしてます・・・。 |